マイクロバブル・ナノバブルの新たな可能性4

もっと知りたいナノバブル

2022年02月14日

マイクロバブル・ナノバブルの新たな可能性4

酸素移動効率に関して、少し時間をさかのぼってこれまでの取組みをざっと見てみます。

昭和40年代後半から50年代、増大する下水量に対応するため、
限られた処理場用地を効率的に活用し、より多くの下水を処理できる反応槽が必要となりました。
そこで、深槽曝気槽の技術開発が行なわれ、同時に曝気空気の溶解特性についての調査が始まります。
10年に及ぶ理論解析の結果、その成果として導入されたのが、バッフル板付水深10mの反応槽と、
散気効率の向上を図った「焼結型微細気泡散気装置」の開発と「全断面多段旋回流曝気」の試みです。

ここでは「焼結型微細気泡散気装置」に関してのみ言及しますが、当時の気孔径は300μ mだったそうです。
なかには150μ mのものもあったとのことですが、気泡のサイズは150?300μmといったところでしょうか。
より微細な気泡を発生させ、空気と排水との接触面を大きくすれば、
酸素移動の効率化につながることは理論的に判っているものの、
微細気泡を吐出する気孔が目詰りするなどのハードルもあったようです。
その後もいろいろな試みがなされてきましたが、散気装置の性能向上、ブロワ等の周辺設備の省力化、
制御方法などを含めた「トータルなシステム構築」に対する決定打はなく、いまだ課題が残されています。

ところで、今回、排水処理の歴史を調べてみて知ったことなのですが,微細気泡の活用は、
マイクロバブル・ナノバブル技術が登場する遥か以前から取組まれていたのですね。
ただ当時は、たくさんの気孔から空気を押しだし、微細気泡を作っていたわけで。
バブルの径も100μm以上のものでしたが、より微細なマイクロバブルの必要性から、
今日のマイクロバブル生成技術が誕生したと言えるかもしれません。
今日のマイクロバブル技術なら100μm以下のものが作れます。
より微細になり、接触面も広がっているのですから、酸素移動効率も当然上がっているはずです。
それでは、なぜ一気にマイクロバブル・ナノバブル技術が普及していないのでしょうか。

それは、酸素移動効率が上がることと、微生物による処理能力が上がることはイコールではないからだと思われます。
排水中の酸素濃度をいくら上げても、微生物が利用する酸素量(BOD 生物学的酸素要求量)を越えている場合、
その酸素は無駄なものです。
処理する排水にもいろいろありますが、計算によってそれぞれの必要酸素量を導き出し、
微生物群に有効活用される酸素量を供給すればよいのです。過剰に供給してもあまり意味はありません。
また、排水槽内の攪拌力の不足、ランニングコスト、メンテナンスなどの面で、
いかに効率的に酸素を移動させても採算が取れない技術だからなのでしょう。

否定的なことばかり書きましたが、当コラムは「新たな可能性」を模索するためのものです。
マイクロバブル技術の酸素移動効率は高いのですから、あとはどのようにすれば普及する技術とし
て認知されるのか、そのあたりのことを考えなければなりません。
そこで、次回は100μm以下のマイクロバブル(ナノバブルも含め)の特性を明らかにしながら、
その可能性を探ってみようと思います。