続・農業革命9

もっと知りたいナノバブル

2020年11月17日

続・農業革命9

前々回のコラムで、Youtubeでご覧いただける名古屋大学理学研究科構造生物学研究センター
臼倉治郎名誉教授の「透過像、走査像同時計測可能なクライオ電子顕微鏡の開発と応用」を紹介しました。
後半に、ナノバブルを撮影した件(くだり)がありますが、そこで、こんなことを語っておられます(要約)。
「ナノバブルを見てみようということでトライしたところ、ものの見事に見えました。
ここで面白いことは、気泡がちょっと黒く写っていることです。
気泡だったら、もっと白く写るのではないかと思っていたのですが、
どうやら気泡がイオン化と言うか、電子をもっているから黒く写るようです。
いろいろな研究者が、ナノバブルはマイナスに帯電していると言っています。
私も、イオン化しているのではないかと思います」

ナノバブルはマイナスに帯電している、このことが、植物の根に、なんらかの働きを持つのでしょうか。
紹介したことがある大下誠一教授は、ナノバブルを含む水を種子に与えると、
水の中に発生した外生のROS(活性酸素種 ?OH他)が、種子の細胞壁の緩みを生じさせ、
同時にシグナル分子となり、内生のROSを発現させる。また、デンプン分解酵素が生成され、
種子の発芽、幼根の「生長促進プロセス」が起きていると報告しています。
?OHはマイナスです。一部の研究者は、ナノバブルは?OHの殻で形成されていると主張しています。

そこで、こんなことを考えてみました。
土壌中の「根圏」はマイナスに帯電しています。これは、プラスである栄養素を引きつけるためです。
ということは、ナノバブルも栄養素を引きつける働きがある、ということではないでしょうか。
この仮説は、果たして成立するでしょうか。
どこかで、このようなことを解説している方が居られるかもしれないと、ネットで検索してみました。
ひとつ見つかりました。
「ナノバブルのマイナスの電荷が、プラス電荷の各種栄養素を引き付けることで、
栄養素を届けやすい環境を作り出していると考えられます」というものです。
ただ、「考えられる」という、想像の域を出ないもので、実際に行なった実験・検証の報告はありません。

海外の報告も探してみました。
見つかりました。『Plant Production Science』に掲載され、本年2月にオンライン公開された論文です。
「超微細気泡は、養分不足ストレス下での大豆苗の成長を効果的に促進する」というタイトルです。
なんと、海外で発表された論文ですが、発表者は近畿大学農学部能楽研究科の先生方です。
結果と考察を読むと、微細気泡水中(100nm)のROS(?OH他)産生は、大豆の成長促進に関与している可能性がある、というものでした。
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/1343943X.2020.1725391
ここで読めます。次回のコラムは、この研究結果をもとに、再度、マイナスに帯電したナノバブルの根との関わりを考察します。