ナノバブル!よもやま話2

もっと知りたいナノバブル

2020年05月17日

ナノバブル!よもやま話2

ナノバブル? それともファインバブル?

1992年、『創造する機械』という書物が、6年の翻訳期間を費やし、ついに日本でも出版されました。
副題は「ナノテクノロジー」です。
著者はエリック・ドレクスラー。アメリカの工学者であり、分子ナノテクノロジーの理論的先駆者です。
詳しいことはネットでお調べいただきたいのですが、当時この本を手にした者にとって、「ナノの世界」は、
実にエキサイティングなものでした。

そして2001年、クリントン政権はナノテクノロジーの膨大な経済的ポテンシャルを認め、
「国家ナノテクノロジー・イニシアティブ (National Nanotechnology Initiative = NNI)」
という組織を、国の重要な科学技術戦略の一環として設立しています。
一方、わが国でも、第 2 期科学技術基本計画(2001 年 3 月)や、総合科学技術会議の分野別推進戦略
(2001 年 9 月)にて、「ナノテクノロジー・材料は、広範な科学技術の飛躍的な発展の基盤を支える
重要分野であるとともに、21 世紀の基幹をなす産業競争力の強化と経済社会の特続的発展等に不可欠な
重点領域」として、国をあげて研究開発を進めるべきと位置付けました。
今日のナノテクノロジーの広がりは、こうして始まったのです。

ところが、「ナノ」という音に対して、やや忌まわしい印象がつきまとうことになります。
「ナノ・ポイズン ナノ毒」「ナノトキシコロジー ナノ毒性学」「ナノ・ウェポン ナノ兵器」
という用語です。
ナノ毒は、金属ナノ材料が体内に入り凝集すると、人体に悪影響をもたらします。
ナノ毒性学は、ナノ粒子やナノ材料がもつ毒性を研究する学問です。
最後のナノ兵器ですが、現在、中国・ロシア、アメリカ、ドイツが数十億ドル投じて開発競争を繰り広げて
いるのだそうです。
『人類史上最強 ナノ兵器:その誕生から未来まで』の中に、ナノ兵器は核兵器を超える大量破壊兵器との
記述があります。
水源や食物連鎖のどこかに、毒性ナノ粒子をバラまくだけで、何百万人の人々や動物を簡単に殺すことが
できるからです。
ウィルスと同様、テロリストの手にわたった場合、どのような事態が起きるのか、恐ろしい限りです。

そのような状況下、日本のマイクロ・ナノバブルの研究者は、ナノから連想される忌まわしさを払拭する
ために、ファインバブル・ウルトラ・ファインバブルという名称にすることを推奨しました。
ただ、海外の研究者に聞くと、バブルに関しては「ナノバブル」と呼称しても、なんら悪い印象を抱かない
とのことです。あくまで、金属ナノ粒子やナノ材料のことであり、水中のバブルにはなんら共通項はなく、
別のものだという認識です。
また、バブルは粒径(サイズ)が評価の基準であるため、長さの単位であるマイクロメーター、ナノメーター
を使用するのが当たり前であるとの見解です。
海外のナノバブル研究に遅れをとらないためにも、ファインバブルでなく、世界基準であるナノバブルに統一
した方が良いのではないかと思います。
あくまでも個人的な意見です。