世界のナノバブル最新情報!Part9
もっと知りたいナノバブル
2020年04月30日
世界のナノバブル最新情報 Part9
ナノバブルに関する海外の論文を検索すると、8割以上が医学領域の報告です。
今回は、その中から「超音波イメージングとマイクロ・ナノバブル」について取り上げさせていただきます。
超音波造影剤(マイクロバブル)を使用する画像検査というものがあります。
血管内に直径5マイクロメーター以下のマイクロバブルを注入し、体外から超音波を当てると、
血管内にあるマイクロバブルが振動し、超音波を反射します。この反射音を画像処理して、
毛細血管の位置を知ることができるのです。
また、「Flash Replenishment Imaging(FRI)」は、血管内に存在するマイクロバブルを、
フラッシュエコー(高音圧の超音波)を使用して崩壊させることで、血管内を再灌流するマイクロバブル
を観察し、リアルタイムで血流動態を把握できます。
昨今では、マイクロバブルの安定性の改善が進み、パーフルオロカーボンや六フッ化硫黄を脂質で覆った
マイクロバブルが日米欧ですでに認可され、医療現場で使われるようになっています。
また、「診断」のみならず、一歩踏み込んで、薬物の細胞質へのデリバリー効果を目的とした「治療」
にも活用しようという研究がなされています。
より詳しくお知りなりたい方はこの報告をお読みください。
https://shingi.jst.go.jp/past_abst/abst/p/15/medU-net/medU-net05.pdf
マイクロバブルによるドラックデリバリィだけでなく、癌細胞周辺に集積したマイクロバブルを振動させ、
音響エネルギーを熱エネルギーに変換することで、癌に対する温熱療法を行なうことも可能なのだそうです。
正常な細胞に比べて、がん細胞は熱に対して抵抗性が低いということは広く知られています。
43度の温度で癌は死滅します。
癌細胞に超音波のみを照射すると、約38度まで温度は上昇しますが、マイクロバブルと超音波を併用した
場合は約44度まで上昇します。
ラットの実験で、抗腫瘍効果について検討したところ、マイクロバブルと超音波を併用した群において、
有意な腫瘍増殖抑制効果が確認できたそうです。
マイクロバブルと超音波の熱的作用を利用することで、癌の温熱療法への応用が期待されます。
さて、海外の動きはどうでしょうか。
先ほど、癌細胞周辺にマイクロバブルが集積する、そして超音波で振動させると書きました。
この時、より効果をもたらすのは、超音波の振動数に共鳴するマイクロバブルのサイズ(粒径)
が統一されていることではないでしょうか。
また、その粒径はマイクロサイズで良いのでしょうか。
中国武漢華中科技大学同済医科大学同盟病院超音波からの報告です。
「腫瘍イメージングのために最適化されたナノバブルの作成」
一部、 内容を紹介します。
マイクロバブルと比較して、ナノバブルは血管系から血管外の標的部位に移動することが可能で、
超音波分子イメージングの適用範囲を大幅に拡大することができるというものです。
報告は、サイズだけでなく、安定性、毒性評価など、多岐に渡っていますので、以下を参考にして下さい。
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fphar.2019.00610/full