マイクロバブル・ナノバブル基礎 5

もっと知りたいナノバブル

2022年04月20日

マイクロバブル・ナノバブルの基礎 5
 
泡は水面に向かって浮き上がります。気体は水よりも軽いので浮力が働き、水面に向かって上昇するのです。浮力は、泡の大きさで異なり、大きい泡ほど素早く浮き上がります。
気泡の半径 r
水の密度 p
重力加速度 g
水の粘度 η
  気泡の上昇速度 u
気泡の密度を無視すると、気泡に働く浮力は  F=4πr^3ρg/3 (アルキメデスの原理)
気泡に働く抵抗力は、 F=6πηru (ストークスの定理)
これを整理すると u=(2/9)r^2ρg/η
この式から、気泡の径が大きいほど速く上昇することが分かります。
 と同時に、小さいほどゆっくりと上昇します。
 
60マイクロメーター以下のサイズの泡は浮力が小さいので、ゆっくり浮き上がりますが、その間に泡の中の気体(窒素と酸素)が水の中に漏れ出してどんどん小さくなり、水面に浮かぶ前に消えて無くなります。
勿論、60マイクロ以下の泡も同じように消えて無くなります。
そうすると、理論的には、純水中にナノバブルというものは存在しないことになります。
ナノバブルの存在に疑問をもっておられる方は、この考え方に基づいて「純水中でナノバブルは安定的に存在しない」と主張されます。
 
ナノバブルは、厳密に言うと泡ではないのでしょう。
前コラムでイメージ図を紹介しましたが、ナノサイズの気泡核をイオンの「膜」で覆ったカプセル(殻)と考えざるを得ません。
 
では、イオンの殻に覆われたナノバブルはどのように形成されるのでしょうか。
イメージとしては、ナノバブル生成時の激しい気液混合力により、水中に多くのイオンが発生し、そのイオンがナノレベルになった気泡核を包み込みナノバブルが形成されると考えられます。
 
いろいろなナノバブルの研究論文を読みましたが、昨年発表された東北大学未来科学技術共同技術センターの高橋正好教授の論文がもっとも得心できるものです。
「通常の気泡(大きな泡)は水中を急速に上昇して表面でパチンと弾けて消える。一方、マイクロバブルはゆっくりと上昇しながら、さらに小さくなって表面に行き着く前に消滅する。これは内部の気体が周囲の水に溶解するためである。ナノバブルは微量のイオンを含む水中でマイクロバブルを発生した時に生成する。イオンが泡の表面に集まって無機質の薄い殻を作ると考えられる。この様にして生成したナノバブルは非常に安定な存在である」
 
次回は、海外の研究者のナノバブルの捉え方を紹介します。