ナノバブルとは何か!14

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2021年03月10日

ナノバブルとは何か!14

ナノバブルの表面について書いてきたのですが、
ゼータ電位のことをもう一度おさらいしておきたいと思います。
界面動電電位(エレクロキネティック・ポテンシャル)ゼータ電位と呼ばれています。
液体中に存在する粒子は、プラス、マイナスのどちらかに帯電していますが、
中性を保つために粒子がプラスに帯電しているとマイナスのイオン粒子がマイナスに
帯電しているとプラスのイオンが、粒子を取り囲むように表面に集まってきます。
これを「固定層」と呼びます。
ただ、液体中のイオンは、熱運動のため撹乱されています。じっとしてはいないのです。
「固定層」から離れていくにつれ、イオン濃度は低くなっていきます。
これを「拡散層」と呼びます。
この{固定層}と「拡散槽」の間に、イオンが移動するために“滑り面、
もしくはずり面”というものが生じます。この“ずり面”の電位が、すなわち「ゼータ電位」です。
粒子から充分に離れて電気的に中性である領域の電位をゼロとします。ゼータ電位は、
このゼロを基準として測った場合の値です。
微粒子の場合、ゼータ電位の絶対値が増加すれば、粒子間の反発力が強くなり。
粒子の安定性は高くなります。
ごく簡単にまとめましたが、詳しくはネット上の「ゼータ電位」の解説をお読みください。

ナノバブルの安定性には、このイオンの「層」が欠かせません。
これまでイオンの「殻」と説明してきたものです。
この報告を最初にされたのが、元産業技術総合研究所の高橋正好氏です。
2006年の『Journal of Physical Chemistry 』に掲載せれています。
一部を引用します。
「マイクロバブルの研究から、ナノバブルの安定化メカニズムとしては気泡周囲にイオン類が
濃縮するモデルが考えられる。
マイクロバブルの縮小時において、気泡のゼータ電位を測定したときに、
気泡がゆっくり縮小しているときには電位の顕著な変化は認められないが、
縮小速度が上がるとゼータ電位の急激な増加が確認される。
気泡の帯電の原因としては気液界面にイオン類が集合している状況が考えられる。
ゆっくりした縮小では過剰となった電荷(イオン類)は周囲に拡散するが、
縮小速度が大きい場合には電荷が濃縮する。
この現象は水中における電荷の移動が十分に遅いことを示している。
ナノバブルはマイクロバブルを圧壊させて作るが、
この時にはほぼ瞬時に気泡を極小化しているため、
電荷は拡散する時間が無く微小な気泡の周囲に極めて高濃度に集まる。
ところで、水の気体溶解量はイオン濃度に反比例する(Salting out現象)特徴を持っている。
このためナノバブルサイズの気泡に縮小された場合、
気泡の周囲にイオンが極めて高濃度に濃縮して一種の殻を形成し、
気泡内部から周囲の水への気体の移動(溶解)が抑制される。
その結果、気泡は長期に安定して存在するモデルが考えられる」。

ご本人に直接お会いした時、「色々な論文に私の報告が引用されているのですよ」と、
誇らしくおっしゃっておられたことを思い出します。